メンタルヘルス

待合室現代の社会はストレスに満ちており、また、社会が私たち個人に求めるものが近年ますます高度かつ複雑になり、『ゆっくり・のんびり・マイペース』に過ごすことがいよいよ難しくなってきています。

なんとなく疲れやすい、ボーッとして集中できない、頭が重い、寝つきがわるい、出勤する事がおっくう、仕事や家事が手につかない、わけもなくイライラ、ドキドキする、自分の居場所が見出せない、こうした症状はうつ病やストレス障害でよく見られる症状で、大脳の疲労のサインです。

現代では、およそ10人のうち2~3人にこの大脳疲労サインが認められます。
このような脳の疲労は自分ひとりではなかなか解消できないのですが、残念ながら「自分で治さなければ」と無理されている方や「自分に根性がないから」とあきらめている方が多いようです。しかし、これらの悩みも、早期に専門医の診断と治療を受けることで驚くほど良くなる場合が少なくないのです。

からだの病気と同様、こころの病気も早期発見早期治療がとても重要です。

■不眠症・睡眠障害

睡眠の障害には

  • 1) 寝つきが悪い(入眠困難)
  • 2) 途中で起きてしまう(中途覚醒)
  • 3) 眠りが浅い(熟眠困難)
  • 4) 朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)

といったパターンがみられます。

何らかの原因で眠れない日々が続くと「今夜もまた眠れないかも…」という不安や不眠のストレスが悪循環となる場合があります。

まずは不眠の原因を明らかにし、それぞれに合った治療を行うことが大切です。


■うつ病

うつ病とは、人間関係のストレス、ショックな出来事、季節の移り変わりなどが引き金となり、脳内の神経伝達物質のバランスがくずれた結果、気分や生きるエネルギーが落ち込み、体にも不調があらわれるという脳の機能的な病気です。

最近では日本人の5人に1人が一生のうちでこの病気を経験するといわれていますが、治療を受けている人はわずかという現状です。しかし、正しい知識と適切な治療でうつ病は治る病気です。

お心当たりのある方は、早めの診察をお勧めします。


■自律神経失調症

自律神経失調症とは、生活習慣や過度のストレス、環境の変化、体質、ホルモンの影響などにより、体に不調を引き起こす病気です。

また、医療機関で検査をしても異常はみつからず、問題なしと言われてしまうことも少なくありません。その症状はめまい、耳鳴り、頭痛、動悸、胸部の違和感、便秘、下痢、肩こりなどと多彩で、いくつか症状が重なって出たり消えたり、という場合もあります。

他の病気と関連づけられるケースも多いので、正しい診察と心身両面から柔軟に行う治療が大切です。


■パニック障害

突然、なんのきっかけもなく激しい動悸、めまい、吐き気、呼吸困難などのパニック発作が起こり、同時に「このままでは死んでしまうのでは?」という激しい恐怖感を感じ、これが何回も繰り返される病気です。

そして「また発作が起きるのではないか?」という不安のために、発作を起こした乗り物や場所を避けるようになり、日常生活に大きな支障をきたすようになります。

治療を受けずに放置すると症状は徐々に進行し、うつ病などの合併症を起こすこともありますが、適切な治療を早期に始めれば必ず治る病気です。

 

■社会不安障害(あがり症)

社会不安障害とは、「人前で恥ずかしい思いをするのではないか」と過剰な心配をするために恐怖心が非常に強くなり、そのような場面に遭遇すると、赤面、発汗、震え、どもり、嘔気、下痢、腹痛といった症状が現れる病気です。

このような症状が「また起こるのでないか」といった不安を引き起こし、人が集まる場面を避けるようになります。その結果、学業や就業、さらには結婚などの社会生活に大きな問題を抱えてしまうことになるのです。15歳前後に発症することが多いのですが、病気と気付かず「性格の問題」と思い、我慢して日々を過ごしている方が大勢いると考えられています。


また、厄介なことに、うつ病、アルコール依存、パニック障害などの精神的な病気を引き起こす原因となり、悪化すると自殺を考えることもあります。それゆえに早期発見と適切な治療が必要なのです。


■強迫性障害

ある考え(例えば、家を出た後に、ガスの元栓はちゃんとしめただろうか、戸締りはちゃんとしただろうか、など)がくり返し頭に浮かんできて、強いこだわり(不安)を持ってしまいます。

このこだわりは、自分で打ち消そうと思えば思うほど、不安が強くなります。その不安を解消するために、確認行為(さきほどの例で言えば、出社した後で会社からわざわざ自宅まで引き返して、ガスの元栓や戸締りを確認したりします)が起こり、日常生活に大きな支障をきたします。

強迫性障害には、うつ症状も同時にみられることが多く、その意味でも早期に適切な治療を受けることが大切です。数年前より、日本でも強迫性障害の治療薬が使えるようになり、治療効果も高いので、早めにご相談ください。


■更年期障害

更年期障害とは、更年期すなわち成熟期から老年期への移行期に現れる不定愁訴を総括した症候群のことです。

症状の種類・程度・期間などには個人差があり、イライラする・眠れない・汗をよくかくなどの急性症状から、肩こり・腰痛・泌尿器系障害などの慢性症状があります。心身のバランスを整えながら正しい治療を行うことが重要です。


■認知症(もの忘れ)

認知症とは脳細胞の萎縮や損傷によって、記憶や思考に障害を生じる脳の病気です。65才以上の人々の10人に1人が認知症を発症していると言われています。

生理的な老化が原因で起こる「もの忘れ」は、行為の一部や事柄の一部を忘れるのに対して、認知症による「もの忘れ」は、体験したことそのもの全てを忘れ、もの忘れをしている自覚がないのが特徴です。

認知症の原因は様々ですが、アルツハイマー型認知症という病気がその半数を占めています。

また、脳出血や脳梗塞が原因でも認知症が起こります。そして数年をかけて徐々に症状が進行すると、排泄、入浴、食事などの日常動作に支障を来たし、せん妄(幻覚妄想)、興奮、徘徊などが現れたりします。

 

現在では症状を緩和させる治療や進行を一時的に遅らせる薬があり、また、原因によっては完治が望める認知症もありますので、早期に適切な診断を受けることが大切です。